北九州で定時制高校の教頭を務める末永周平(光石研)。ある日、元教え子の平賀南(吉本実憂)が働く定食屋で、周平はお会計を「忘れて」しまう。記憶が薄れていく症状に見舞われ、これまでのように生きられなくなってしまったようだ。待てよ、「これまで」って、そんなに素晴らしい日々だったか? 妻の彰子(坂井真紀)との仲は冷え切り、一人娘の由真(工藤遥)は、父親よりスマホの方が楽しそうだ。旧友の石田啓司(松重豊)との時間も、ちっとも大切にしていない。新たな「これから」に踏み出すため、「これまで」の人間関係を見つめ直そうとする周平だが──。
6月9日(金)新宿武蔵野館、
シアター・イメージフォーラムほか
全国ロードショー
光石研
吉本実憂 工藤遥 杏花 岡本麗 光石禎弘
坂井真紀 松重豊
監督・脚本:二ノ宮隆太郎
製作総指揮:木下直哉 プロデューサー:國實瑞惠 関友彦 鈴木徳至 谷川由希子
撮影:四宮秀俊 照明:高井大樹 録音:古谷正志 美術:福島奈央花 装飾:遠藤善人
衣装:宮本まさ江 ヘアメイク:吉村英里 編集:長瀬万里 音楽:曽我部恵一 助監督:平波亘 制作担当:飯塚香織
企画:鈍牛倶楽部 製作:木下グループ 配給:キノフィルムズ 制作プロダクション:コギトワークス
©2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ
(50音順)
この主人公はなにをしているのだろう? 自分は今何を見ているのだろう? と思いながら食い入るように緊張感のただよう画面を見つめていた。
見ているうちに、周囲の誰からも信用も尊敬もされていなさそうなこの主人公の男をどこかで見たことのあるような気がしてきた。
「あ、これ俺だ……」
だがこの映画の主人公はそれまでの人生を小さくとも覆そうと映画の中で描かれている数日間を懸命に生きる。
ラストシーンのあとの主人公の翌朝の目覚めは、いつもより少しだけ良かったのではないだろうか。
そんな目覚めを得るために、俺もちゃんと生きようと思った。
足立紳さん脚本家・映画監督
二ノ宮隆太郎監督の映画を見るといつも悔しい気持ちになる。こんな映画をつくってみたいといつも思うからだ。この映画を必要としている人にこの映画が届きますように。人間のささいな変化を自分もこんな風に描けるようになりたい。
今泉力哉さん映画監督
濱口竜介監督や三宅唱監督の登場以降、日本映画に新時代が到来している。多くの良識ある観客が抱いてきたであろうそんな予感がまさに現実となりつつある今、この『逃げきれた夢』を見逃す手はない。二ノ宮隆太郎監督もまた新時代を担っていく作家の一人であることを、この映画は慎み深く、しかし鮮烈に告げている。
神谷直希さん東京フィルメックス プログラム・ディレクター
描かれている世界は小さいけれど大きなものが伝わってくる。
言葉にならない感動というものがあるとしたらこの映画に違いない。
瀬々敬久さん映画監督
光石さん…カンヌって…凄えっす…
ついに“世界のケンミツイシ”になったんすね…泣けてくるっす…
『逃げきれた夢』まるで光石研の生き様を観てるようで…堪らねぇっす…
滝藤賢一さん俳優
共演した際、光石さんの家に遊びに行きたいって言ったら、駄目! 壁に落書きとかするでしょと拒否されました。笑いながらも、ちょっぴり悲しかった僕。以後はそぉんな関係を修正するために僕の役者道はあります。
俳優にとって夢のようなアテ書き的映画。さり気なく己を晒しつつ名優への道を歩む光の石に近づけるよう、精進したいと思います!
田口トモロヲさん俳優など
光石研さんから目が離せない。
表情、仕草、歩き方、言葉、そのどれもが魅力的だ。
それは一人の俳優にとどまらず映画全体を包み込んでいる。
共演者、ストーリー、カメラワーク、編集、空気感、そして北九州の町。
光石さんの人生に流れる血が、溢れんばかりに染み渡った映画だ。
津田寛治さん俳優
昭和な生き方を半世紀やってて令和という時代に入り、世の生き様と抗ってきた俺は暗中模索中だった。
が! 本作を拝見して、道が開けてきたわけなんだよ、、、これでいいんだ! と。
寅さんじゃないけど世の中、女性はしっかりしてて、男性は情けないぐらいが微笑ましいかもね。
我々世代の代表者、光石研さん最高!!
寺島進さん俳優
生きていて、これまでの自分を回顧することは何度もあるだろう。美しかった思い出、蓋をしたい辛かった思い出。その全てを肯定でも否定でもなく、人間臭く対峙する主人公・周平の姿に、スクリーンを通して僕たちは思いを馳せる。
これまでと、そしてこれからの人生を。
二ノ宮くん! あんた凄いよ!
藤井道人さん映画監督
こんな背中も、こんな沈黙も、これまで自分は見ようとも聞こうともしていなかったらしく、ずっとスリリングでした。その辺の路上なのに、いやその辺の路上だからこそ、ただの立ち話がどんどん切実な時間になるんだろうか。ともかく、光石研さんをもっとみていたい、終わらないでくれ! と思いました。
三宅唱さん映画監督
二ノ宮隆太郎の映画を観ていると、いかに他の映画が余計なモノで埋め尽くされているのかを思い知らされる。無駄が無いせいで、この映画は異常に静かだ。だけど、俳優たちを見つめる監督の熱量が凄過ぎて、静かだけど、常にざわざわしている。だから全く退屈しない。物語のために俳優が動くのではなく、役者が動き出して物語が生まれる。そんな映画として当たり前のことを思い出させてくれました。二ノ宮ありがとう。あと光石さん最高でした。
山下敦弘さん映画監督
これまでの分岐点で選択を間違えた後悔は沢山あるけれど、この映画があれば、次に来るかもしれないターニングポイントは怖くない気がした。頑張れでも頑張るなでもない、ただそこにいて寄り添ってくれる映画。そいにしても、しゃあしくて情けない九州弁の光石さんは愛おしくてたまらんとよ。
吉田羊さん俳優